■アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎をあっという間に治すことは不可能です。辛抱強く上手に付き合うことで、少しでも皮膚を正常に近付けて、かゆみを減らしましょう。環境整備、スキンケアと外用剤、内服薬、掻爬防止が治療の3本柱です。環境整備やスキンケアをすることで、ステロイド外用剤の使用量を減らすまたは無くすことができます。またここでは眼科合併症についてもふれます。
□環境整備
アトピー性皮膚炎はアレルギー反応により起こります。身のまわりのアレルギーを引き起こす物質(アレルゲンといいます)を減らすことで、症状を軽くすることができます。家の中のほこり、チリ、ダニ、カビを減らす努力をしましょう。
□スキンケアと外用剤
アトピーのお子さんの皮膚は脂分に乏しく乾燥して痛みやすいし、皮膚は外界からのさまざまな刺激によって、とかく荒れがちです。皮膚の汚れを落とし,強い刺激を避け、皮膚を正常のように保つのがスキンケアです。お母さんが毎日お肌の手入れ、お化粧をするのと全く同じ感覚で、お子さんの皮膚の手入れをしてあげて下さい。スキンケアのひとつの助けをするのが保湿剤です。保湿剤は皮膚症状がよくなっても塗り続けましょう.保湿剤を塗らないとすぐに皮膚が荒れて、痒くなり、掻くことによって皮膚のバリアを低下させ、アトピー性皮膚炎にし、結局はステロイド外用剤の御厄介になってしまいます。
1.皮膚の汚れを落とす 皮膚に残った汗、よだれ、食べ物かすなどは皮膚に炎症を起こして、アトピ−性皮膚炎を悪化させてしまいます。石鹸、シャンプーなどを使って、手で泡立てて、手で汚れをよく落としましょう。香料を含んでいない石鹸を使用して下さい。特別な石鹸は必要ありません。
2.皮膚への強い刺激を
  避ける
強い日差しは皮膚に炎症を起こし、乾燥させてしまいます。皮膚の熱感、乾燥は痒みを引き起こし、アトピ−性皮膚炎を悪化させます。夏、海で泳ぐ時にはTシャツを着せましょう。屋外に長時間いる時には、つばの広い帽子をかぶり、日焼け止めクリームを塗りましょう。皮膚の汚れを落とす時には、たっぷりの石鹸、シャンプーで柔らかいガーゼまたは手を用いて下さい。アカ落とし、ヘチマなどは皮膚を痛めてしまうので、使用しないで下さい。力を入れてゴシゴシこすると皮膚を痛めるので注意しましょう。
3.保湿剤をまめに塗る 冬になると皮膚が乾燥して、白い粉がふいたようになります。こうした状態を放置すると皮膚はますます荒れてしまいます(夏場は汗をかくので、皮膚の脂分が多くなり、乾燥肌は目立たなくなります)。当院ではウレパール、ヒルロイド、プロペト等の保湿剤を処方します。乾燥した皮膚に直接、または軟膏を塗った後に上塗り用として使って下さい。保湿剤はたっぷり、まめに塗って下さい。皮膚症状がよくなったように見えても塗り続けて下さい。冬には皮膚へのつきがよい軟膏、クリームタイプのものを、夏には汗をかくのでさらっとした感触の保湿剤をお勧めします。

□内服薬
本院では、かゆみを抑える抗ヒスタミン剤(サイプロミン、アタラックスP等)やアレルギー反応を抑える抗アレルギー剤(セルテクト,ザジテン,アレギサール、アレロック、クラリチン等)を処方します。内服薬を服用することで、かゆみを減らし、掻く回数を減らすことで皮膚の荒れを防ぎます。
□掻爬防止
アトピー性皮膚炎では痒みのために、どうしても皮膚をボリボリと掻いてしまいます。掻くと皮膚が痛み、アトピ−性皮膚炎が悪化します。掻き壊した皮膚にブドウ球菌などが入り込んで化膿すると、さらに悪化してしまいます。少しでも皮膚に無用な刺激を加えないようにしましょう。爪をまめに切る、衣服は綿にする、掻爬防止手袋を使用する,皮膚にあたる頭髪は切るか束ねる,両肘を筒状のもので被う(肘が曲がらないので掻けない,肘に汚れがたまらない)などの方法があります。
1.爪を切る 爪で掻くとそれでなくても弱い皮膚がますます荒れてしまいます。爪をまめに切りましょう。切ったあとにヤスリで磨き、爪を尖らせないようにすることが大切です。
2.綿製品を着用する チクチクした衣服を着ていると、かゆみが増してしまいます。肌に当たるところには皮膚に刺激の少ない木綿の肌着を着ましょう。お子さんが小さく顔をこすり付けて来る時はお母さんの洋服も綿製品にしなければいけません。
3.厚着にしない からだが暖まり過ぎると、かゆみが増してしまいます。衣服や布団をその日の気温に応じて、こまめに調節しましょう。
4.ウエット・ラップ法 英国で行われ、その優れた効果が認められたので本院でも取り入れている方法です。暖かく湿らせたチューブ型包帯(チュビファースト)と乾いたチュビファーストの二層の装着による冷涼感で“痒み”の知覚・認識を軽減し、痒いから掻く、または習慣的に掻く行為の減少を図り、モイスチャー効果で乾燥性皮膚の状態の改善が期待できる新しい手技です。詳しくは本院にお尋ねください。
5.頭髪を短くする,束ねる 髪の毛は想像以上に汚れているので、頭髪の先端があたる部分の皮膚は、知らず知らずのうちに刺激を受けるため、荒れてしまいます。前髪が長いと額、おさげ髪なら肩、首の皮膚が刺激を受けて荒れます。頭髪を短くするか、束ねましょう。
6.痒み止めをきちんと
  服用する
痒み止めはかゆみを直接減らすだけでなく、掻く回数を減らすことで、皮膚が荒れるのを防いでくれます。抗ヒスタミン剤(ぺリアクチン、アタラックスP)や抗アレルギー剤をきちんと服用しましょう。特に抗ヒスタミン剤は眠気をもようすので、乳幼児のアトピー性皮膚炎の痒み止めとしては非常に有効です。

□眼の合併症
アトピー性皮膚炎では,さまざまな眼の合併症を生じることが知られています。小児期から眼瞼炎(まぶた,眼周囲の皮膚の炎症)が生じることがありますが、成人期以後に 網膜剥離、白内障を合併する可能性があります。
1.眼瞼炎 アトピー性皮膚炎では、眼瞼(まぶた)、眼周囲の皮膚の炎症が起こることがあります。手が届きやすいので、どうしても掻いてしまいます。アレルギー性結膜炎を合併している場合には、なおさら掻いてしまって、眼瞼炎が悪化します。

無意識のうちに掻いてしまうので、抗アレルギ−剤や抗ヒスタミン剤をきちんと服用してください。症状が悪化して、眼瞼の赤味が強い場合には、1週間をめどにネオメドロールEE軟膏を塗って下さい。症状が改善したら眼科用精製白色ワセリン(プロペト)などの保湿剤を塗ってください。内服薬、保湿剤は症状がよくなっても止めずに続けて下さい。

2.網膜剥離 アトピー性皮膚炎で眼瞼炎、アレルギー性結膜炎が起こると、眼周囲をどうしても掻いてしまいます。網膜は薄い膜でしっかりと固定されているわけではないので、繰り返し外力が加わると剥がれてしまいます。網膜剥離はアトピー性皮膚炎の軽症例の1%、中等症例の2〜8%に発症します。20歳代等の若い人に発症することが多く、両眼発症が多いです。原因となる網膜裂孔(裂け目)が角膜に最も近い部位に出来ることが多く、虹彩で邪魔をされて、検査がしづらく、眼底写真をとっても分からないことがあります。

網膜剥離が起これば、手術が必要になります。

3.白内障 アトピー性皮膚炎では、白内障(水晶体がにごってしまう)が起こることがあります。網膜剥離と同様に、繰り返し眼のまわりを掻くことが白内障を引き起こすと言われています。

20〜30歳代に発症することが多く、網膜剥離を合併することもあります。

白内障が進行した場合には手術をして水晶体を取り除きます。その後、眼内レンズを入れるなどの治療が必要になります。


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