母乳とミルク
乳房にしこりがある
乳房全体が固くなってしこるのは、母乳の分泌が良く張っている場合か、赤ちゃんの飲みが悪く残っている場合におこります。大抵は、赤ちゃんの飲みが良くなるか、あるいは母乳を少し搾るだけで治ることが多いです。乳房の一部がしこる場合は、母乳の出る一部の穴に母乳がつまって出なくなったときです。よくマッサージをして、母乳の出を促しましょう。痛いけど我慢してください。熱がなければ乳腺炎の心配はないでしょう。乳腺炎は、乳房が赤く、固く腫れて痛みがあり、わきの下のリンパ腺がはれます。このようなときは受診してください。

母乳を与えてはいけないとき
お母さんが伝染病にかかっている時、また重い心臓病、腎臓病を患っている時は授乳自体が母体に悪影響を与えます。また成人T細胞白血病では母乳を介して子どものうつるので中止します。お母さんが甲状腺機能亢進症で抗甲状腺剤を服用しているときは服用した薬が母乳に出て赤ちゃんが甲状腺機能低下症になるので母乳は与えられません。乳腺炎のひどい時は授乳できなくなります。

搾った母乳の保存
母乳は冷蔵庫で72時間は安全に保存できます。冷凍庫で−20℃に保ったときには約4週間もつといわれています。でもなるべく早く使用したほうが良いので、冷蔵庫で保管した場合には、次の授乳時間に使ってください。
保存のやり方
@ お乳や容器に触れる前に手をよく洗いましょう。
A 清潔なカップに母乳を搾りましょう。
B お乳を清潔な保存容器に移し替えましょう。ラベルには搾乳日時を書き込み、保存順に使用しましょう。搾乳前に手を丁寧に洗っておけば母乳は室温で数時間は持ちますが、すぐに冷蔵したほうが良いでしょう。
C 母乳は冷蔵庫で72時間は安全に保存できます。
D 長期に保存しようとするときは、母乳を冷凍しましょう。冷凍中は容積が増しますので、保存容器の3/4以上は入れないでください。冷凍する前には母乳を冷やして置いてください。すでに凍っている母乳に新しく母乳を足すときは冷やしておくことで今まで冷凍していた母乳が半解凍になるのを防げます。
E 冷凍母乳の解凍に熱湯を使ってはいけません。保存容器を、温かいお湯を入れたボールまたは温かい流水に30分ほどつけて解凍して下さい。解凍したら、上部に浮いている脂肪分を混ぜるために保存容器を攪拌します。
F 解凍した母乳はすぐに赤ちゃんに飲ませるのが良いのですが、冷蔵庫で最大限24時間保存できます。

母乳が出すぎてむせてしまう
母乳が出すぎてむせるときは、授乳前に母乳を搾乳してください。時に早朝や午前中は母乳の出が良いので、むせることがあります。保存容器に保存して午後の母乳の出が悪くなったときに足してください。赤ちゃんに母乳を与えた後も、母乳が余ってしまうような時は、必ず搾っておきましょう。残しておくと乳腺炎の原因になったり,母乳の出が悪く基になります。

授乳に時間がかかる
授乳に時間がかかるのは色々なことが考えられます。
@ 赤ちゃんの吸い方が悪い時
赤ちゃんに心臓や肺に病気があるときにおっぱいの吸いつきが悪く授乳に時間がかかることがあります。しかし、ちょっとしたこと、たとえば鼻が詰まっているだけでも授乳に時間がかかります。飲んで、おっぱいを外し、口に息をして、又おっぱいに吸い付くということを繰り返します。少し馴れたお母さんならおっぱいを吸う口や唇のいつもと違う熱さから熱があることが気づかれます。
A 母乳の出が悪いとき
初めから母乳が良く出ることは珍しいと思います。生後1ヶ月近くなって良く出るようになることも珍しくなく、最低1ヶ月は頑張って欲しいと思います。
痛いけど母乳マッサージを受けましょう。
母乳の出が悪いお母様によく言う言葉は『次のときは妊娠中からご主人に吸ってもらいなさい』です。
初めに子どもに嫉妬するのはご主人かもしれません。今まで自分が独占していた奥様やそのおっぱいを全部子どもにとられるのですから。勿論、ご主人は子ども返りはしませんが。
B 途中で寝たり、遊んだりするとき
 ヒトの赤ちゃんが人間らしく育つには3つの大事な要素があるといわれています。それは一人では生きていけないヒトの子が絶対的に信頼を置ける存在との結びつきを得て、命そのものが保証されているという実感、成長のための栄養そして外の世界に積極的に関わっていくための遊びです。母乳栄養というとついつい栄養のことだけが気になり、途中で眠ってしまったり、遊び飲みをすると無駄のように思ってしまします。しかし、哺乳瓶哺乳では眠ってしまわない子が母乳では空腹を忘れたように眠ってしまうのは、哺乳を通して、この絶対的安心感を得ているためです。母親の乳首を舌で転がしているということは将来の知的な発達、好奇心を育てるという意味があります。しかも母親は自分の乳房を介して、我が子がしていることを感じ取らざるを得ません。こうして母親は直感的に我が子の状態を把握していくわけです。ですから、無理やり起こしたり、無理やり哺乳させたりしなくてもいいのではないでしょうか。
 お母さんが我が子のお乳を吸う様子を楽しむようにしてください。

母乳の出が悪くなった
睡眠・休息を十分にとり、栄養に気をつけ、精神的に安定すれば出てくるようになります。また母乳をよく出すためには、出なくても赤ちゃんに乳首を吸わせることです。この刺激が脳の下垂体に伝わって、母乳を分泌してくれるホルモンがよく出るようになるからです。
私の妻の実験では汁物を沢山飲んだり、お餅を食べると良いようです。ですから豚汁やシジミ汁を良く飲んでいました。

添い寝しながらの授乳は良いか
母乳は『赤ちゃんが欲しい時に欲しいだけ飲ませる』自律哺乳がよいといわれています。しかし、母乳の出方や出る量については個人差がありますので、赤ちゃんの飲みたい量が出ない場合やお子さんによって一度に沢山の量が飲めない場合には、すぐお腹が空きますので、短い間隔で飲むようになります。添い寝も癖にはなりません。
乳首が切れる
初めての母乳栄養児では今まで吸われていないお乳を吸われる訳ですから殆どのお母さんが乳首が痛いと感じます。乳首をいためる最大の理由は適切な授乳姿勢がとれていない時です。乳管は乳輪の境界あたりで膨らんでおりその部分を乳管洞といいます。赤ちゃんは乳首を深く咥え込み、歯茎でその部分を咬むように圧しながら搾り、出てくるお乳を吸い取ります。うまく飲めている時は赤ちゃんはのどがコクッコクッと鳴ったり、動いたりします。乳首だけを吸う場合はチュパッチュパッと音がしますが、細い乳管の部分だけを吸うことになるのでお乳を飲めません。そうすると赤ちゃんはさらに強くチュパッチュパッ吸う事とになり、乳首がひりひりしたり、切れたりします。乳首が切れると痛いので、お乳を深く咥えさせるには勇気がいることになり、ついつい浅く咥えさせることになり、さらに乳首を傷つけてしまいます。切れている乳頭は、授乳を中止して搾乳しておくと、自然に良くなります。あまりに痛みが強い場合には受診してください。赤ちゃんがなめても大丈夫な軟膏をお出しすることがあります。乳頭保護帽を利用してみてもよいでしょう。また授乳開始直前に氷のかけらやアイスノンを痛い乳首にあて、冷やすことで痛みを和らげてから授乳するのも痛みに対する対策になります。
今後の切れないようにする対策は、正しい授乳を仕方をすることです。
@授乳前に乳頭や乳輪を拭くのをやめましょう(乳輪のモントゴメリー腺からの分泌物が乳輪や乳頭を保護する)
A乳首で赤ちゃんの唇を刺激して大きく口を開けさせてから乳首を乳輪部まで深く咥えさせる。
B赤ちゃんの耳の穴と唇を結んだ線上に乳首が来るように抱っこする。赤ちゃんのあごがお母さんの乳房にしっかりと触れるように位置決めをします。
母乳中のダイオキシンが心配
環境汚染による問題ですが、現在の母乳中のダイオキシン濃度は25年前に問題になったときのダイオキシン濃度より低下していますし、現在わかっている範囲では母乳中のダイオキシン類の摂取が乳児に与える影響は直ちに問題になることはありません。それよりも母乳が乳児の発育、感染防止、栄養補給に与える効果が多いことがあげられます。
げっぷ
げっぷを出させる目的は、哺乳時に一緒に飲み込んだ多量の空気を出すことです。ミルクを飲み干すときに必ず空気を飲み込まざるを得ないことになるので人工栄養児の子どものほうがげっぷは多いのが普通です。母乳栄養児や空気をたくさん飲み込まなかった赤ちゃんならば、げっぷが出ないこともあります。赤ちゃんを肩に担ぎ上げるように普通よりも高く抱いて、赤ちゃんの胃のあたりをお母さんの右肩か左肩につけ、軽く圧迫する方法もいいと思います。私が一番出やすいと思うやり方はお母さんが椅子に座って、赤ちゃんを大腿の上に座らせて、少し前かがみにして、赤ちゃんの膝とお腹をつけさせる格好にして背中を叩いてあげるのが一番出しやすいと思います。試してみてください。
ミルクを吐く
たまに吐く程度であれば、空気を吐く時に一緒にミルクも出てくるという場合が多いので心配ありません。ひどく噴水状に吐く時は、幽門狭窄症という病気があります。これは生後3週目頃から吐き方がひどくなり、やせてきます。赤ちゃんが元気がよく、苦しそうでなく、ミルクを吐くならばゲップのさせ方が不十分なためかもしれません。まず、ゲップをよく出させて、それでも吐くかどうか見てみましょう。
ミルクを飲まない
3〜4ヶ月頃に、ミルクを飲む量が減る場合があります。いわゆる“ミルク嫌い”ですが、お母さんが一生懸命に飲ませようとすればする程拒否をします。この場合は、飲まないですぐ欲しがっても与えず、ミルクの時間を決めて与えるのが良いと思います。お母さんがあせって与えようとすればするほどだめになります。育児は子どもに合わせるだけでなく、子どもをこちらのペースに引き込むことも大切で、初めての時は大抵子どものペースにお母さんが振り回されてSOSということが多いようです。哺乳瓶の乳首の種類を替えてみるのもひとつかと思います。母乳を飲ませている場合、疲れてしまって飲まないこともあるので、母乳の後にミルクを足さず、別々の時間に与える方法にかえてみてはどうでしょうか。『空腹であれば飲むでしょう』という感じでおられればよいと思います。
母乳を与えるとすぐに眠ってしまいます
十分に母乳を飲んで満足して寝てしまうこともあります。その場合は、無理に起こすことはないでしょう。赤ちゃんの哺乳力が弱いため、十分に吸わないうちに寝ることもあります。足の裏や頬を刺激して起こして飲ませてあげましょう。授乳に時間がかかるのBをお読みください。
夜中の授乳はいつまで
夜中の授乳は、赤ちゃんのリズムによっても違います。一般的には、生後3ヵ月頃までには、夜中の授乳は不要になる場合が多いようです。しかしなかなかリズムがつかず、ミルクやおっぱいをやめるまで、夜中起きる赤ちゃんもいるようです。
断乳の時期
一般には「遅くても1歳半までに、やめることが望ましいです7・8ヶ月頃から母乳の量が少なくなってきて、母乳の中の免疫物質も少なくなってきますからあまり出ないようであれば、やめてもかまいません。赤ちゃんに知恵がつくと母乳をやめにくくなります」と書いてあります。
三原の考え
お子さんが欲しがったらいつまでの与えてもかまわないと思います。3〜4歳過ぎると自然に止めるようになるか、『そろそろお母さんが疲れたから止めてくれない?』と聞くと、止めてくれます。お母さんさえ与えられるのであれば、与えてあげてください。
イオン飲料
通常赤ちゃんが元気で健康である時には、おっぱいかミルクで水分補給は十分です。イオン飲料は赤ちゃんが発熱・嘔吐・下痢など脱水症状を起こしやすい時に使います。イオン飲料は塩分が多く、又糖分も多いのでいい飲み物ではありません。塩分の濃い食事を好むようになりますので、普段から与えるものではありません。良いものと勘違いし、飲ませすぎてむくみを起こしたケースもあります。
果汁
最初は果実を絞ったものをうすめてスプーンで与えます。3ヵ月頃から最初1さじ、2さじから与え、赤ちゃんの様子をみながらさじ数を増やしていきます。10さじくらい飲めるようになったら、哺乳瓶で与えても差し支えありませんが、1日50mlは超えないようにしましょう。現在、果汁の与え方については議論の多いところです。アメリカでは果汁を与えないほうが良いという勧告も出ています。
果汁は離乳食を与える前に他の味になれることもありますが、一番の意味合いはお匙に慣れる事です。
離乳食は半固形物を与えるわけで、哺乳瓶では与えられません。お匙で与えることになりますが、離乳食を与えるときにお匙に慣れていないと半固形物は入ってくるわ、おさじは入ってくるわ でお子さんが拒否反応を起こします。それでまずお匙に馴れさせる必要があるのです。
母乳と薬
薬の種類や量によっても、母乳に薬がどれ位含まれているかは変わってきます。風邪薬や胃腸の薬などは新生児を持つお母さん以外はまず問題になることはありません。
しかし、特別の抗生物質や甲状腺機能亢進症の飲み薬などは母乳は禁忌になりますし、抗アレルギー剤も母乳は禁忌になっています。
母乳とタバコ
乳汁中にもタバコのニコチンは排出され、母乳自体が苦くなったり、赤ちゃんが興奮しやすくなったりします。又、タバコの煙を赤ちゃんが吸うことは非常に害があります。家族の喫煙はSIDS(乳幼児突然死症候群)発症の大きな危険因子でもあります。勿論、お母さんが吸う事は止めるべきですし、赤ちゃんがいる環境では周囲の人にも禁煙を御願いしましょう。タバコを吸っていたら赤ちゃんは見せません位のことを言ってもいいと思います。
母乳とアルコール
お母さんが飲んだアルコールは乳汁中にも排出されます。そのために赤ちゃんが急性アルコール中毒になったりしますので、授乳中は控えましょう。又アルコール中毒にならないまでも赤ちゃんの、顔や耳に発疹がでたり、涙眼や目やにが出るなど皮膚に反応が出やすくなります。